大手消費者金融の影に隠れて名前は知られていませんが、パスキーは中堅の消費者金融業者の会社名です。北海道に本店を持ち堅実な貸金業を営んでいたパスキーは、貸金業法の改正や不況などの影響で、幾度か名前を変えていきました。
そして、現在パスキーという会社は、世の中に存在しません。今回は、かつて存在した中堅消費者金融パスキーがどのように変化していったのか、消費者金融業界の転換期とともに現状をまとめました。
子会社化?アイフルと中堅消費者金融パスキーの気になる関係
大手の消費者金融アイフルが全国展開するにあたって必要としたのが、地域性です。そこで、北海道札幌に拠点を置いていた、中堅消費者金融パスキーを傘下に収めることになったのです。
(⇒審査に通りやすい消費者金融会社一覧)
大手消費者金融アイフルの買収によってパスキーが子会社化!
パスキーは地元の優良消費者金融で、地域を中心に有人・無人の店舗を27店舗構えていました。以下、パスキーのプロフィールです。
設立:1990年
資本金:3億円
店舗数:北海道を中心に27店舗
そのパスキーを買収したのが、チワワのCMで一世を風靡した大手消費者金融アイフルです。パスキーにとっては、全国への足掛かりとして、悪くはない買収でした。
同じ時期(2004年~2005年)、消費者向け個人向けローンを扱う会社が3社アイフルの参加に入っています。以下の会社です。
- トライト株式会社
- 株式会社ワイド
- 株式会社ティーシーエム
アイフル冬の時代…パスキーが受けた大きな影響とは
しかし、アイフルはその後、強引な営業や取り立ての影響で業務停止になります。テレビCMの停止により事業縮小を余儀なくされます。
パスキーにとっては、アイフルの信用力や業務効率化のノウハウを取り入れている最中の事です。当然、パスキーのその後に大きな影響を与える出来事でした。
その後のパスキーは、アイフルとたもとを分かつことになります。2009年本格的なアイフルの事業縮小化に伴い、ネオラインキャピタルに売却されます。
アイフル買収から4年後…新たな買収先ネオラインキャピタル
1990年に設立して北海道で貸金業を営んでいたパスキーは、15年後アイフルに買収され、その4年後にネオラインキャピタルに売却されることになります。
消費者金融業界において、中堅消費者金融の買収は珍しいことではありません。今有名な大手の消費者金融も、いくつもの企業を内部に取り込んで成長したのです。
相次ぐ消費者金融の破たん…パスキーの売却とその理由とは
パスキーがなぜアイフルから売却されたか。一言でいえば、アイフルの経営難からです。しかし、この時期に起こったある出来事が深くかかわっているのです。
多重債務者の対策として施行された改正貸金業法って何?
パスキーがアイフルから売却される2009年の翌年、2010年に改正貸金業法が完全施行されました。改正貸金業法の主な目的は以下です。
- 多重債務者問題の解決
- グレーゾーン金利の撤廃
多重債務者は、文字通り複数の消費者金融でお金を借りることです。ある業者への返済のために、他の業者からお金を借りる。この行為が多重債務者を作り出しました。
しかし、改正貸金業法における総量規制によって、個人の借入限度額に制限がかかります。年収の三分の一以上の借入の禁止です。
これによって、貸す方の側である消費者金融業者は貸したくても貸せない状況になります。ある意味、顧客のパイを取り合う状況が生まれたのです。
貸金業者パスキーのノウハウは債権回収業務に継承されます
パスキーの場合は、この業界自体の規制にプラスして、アイフルの業務停止がダブルパンチで見舞います。結果、落ち着き場所を失うことになったのです。
同じくして、アイフルに買収されていたトライト・ワイド・ティーシーエムの3社もパスキーと同じく他社に売却されることになりました。
売却先は、ネオラインキャピタルです。もともとクロシードという社名で運営していた、貸金業者です。最終的には、経営難により債権回収業務のみ行う会社になります。
ネオラインキャピタルの破産手続きによってパスキーも消滅…
このように、パスキーだけでなく多くの消費者金融にとって2010年付近は、経営の過渡期になりました。苦しい所は、傘下の会社を売却してしのいだのです。
その受け入れた会社も、ほどなくして経営破たんに陥ることも多く、パスキーが入ったネオラインキャピタルも結局は2013年に破産手続きを開始しました。
パスキーの変遷をここでまとめます。
2005年アイフルに買収
2009年アイフルからネオラインキャピタルに売却
2012年ネオラインキャピタルが貸金業停止
2013年ネオラインキャピタル破産手続き開始
業界冬の時代!こうしてパスキーは消えた…その最大の理由とは
最盛期で27の店舗数を誇っていたパスキーが消えてしまった最大の理由は、何だったのでしょうか。キーワードはグレーゾーン金利です。
改正貸金業法の大きなポイントグレーゾーン金利の撤廃って何?
改正貸金業法の完全施行に伴い、総量規制以外に消費者金融に大きな影響を与えたのが、グレーゾーン金利の撤廃です。
もちろん、中堅消費者金融パスキーも大手消費者金融と同じように影響を受けます。そのグレーゾーン金利とはいったいなんでしょうか?
2010年の改正貸金業法の施行前、金利を決める基準が2つあったのはご存知でしょうか?
- 利息制限法/10万円未満20%、10~100万円未満18%、100万円以上15%
- 出資法/29.2%以内
利息制限法は、貸付額によって決まった上限金利を設ける法律です。出資法は、その金利以内なら条件付で貸付可能な金利を定めた法律です。
利息制限法と出資法の中間がグレーゾーン金利といわれました!
正規の貸金業登録業者には、みなし弁済として、この利息制限法の20%と出資法の29.2%の間のグレー金利を設定することが認められていました。
結果的に、パスキーも20%を超える金利を設定しました。とくに、中堅業者にとって高金利をとって経営を安定させるのは、必須と言える時代だったからです。
しかし、改正貸金業法の完全施行によって、このグレー金利は認められなくなりました。そればかりか、いままでの過払い分の返還義務も出てきたのです。
パスキーをはじめ消費者金融業界に大打撃!過払金の請求とは?
これが、過払い金請求権です。過去10年に消費者金融を利用した顧客で、20%以上の金利を払っていた人は、お金を返してもらえる権利が保障されたのです。
これによって、大手消費者金融はもとより中小業者も過払い金の請求があれば、返還しなくてはならなくなりました。多い業者で、その金額100億円以上とも言われます。
1980年代からビジネスとして発展してきた消費者金融も、2000年に入り様々な要因と法律の改正で、とても厳しい経営環境になりました。
買収、売却されて名称が変わっていったパスキーもまさにその時代の当事者だったといえます。最終的には、ネオラインキャピタルの破産によって幕を閉じることになります。
銀行も参戦!大手~中堅消費者金融、利用するならずばりココ!
経営難に陥った消費者金融の存続のカギを握ったのが銀行です。ところで、銀行は消費者金融が困っているので、救済のために提携したって本当でしょうか?
メガバンクが消費者金融と提携し始めた理由とは…
多くの大手消費者金融は、銀行の後ろ盾を得て、難局を乗り切っています。では、銀行はなぜ消費者金融と提携を始めたのでしょうか?
銀行はボランティア機関ではありません。もちろん、メリットがあったから提携したのです。そこには、金融業界全体の不況も関係しています。
銀行にはノウハウを消費者金融には信用を…双方のメリットとは
消費者金融がメインにやっている、個人向け融資はじつは銀行にとっても、手掛けたい分野でした。しかし、ノウハウがないという問題がありました。
そこで、銀行はその道専門の消費者金融業者を取り込んで、カードローンなどの商品をたくさん生み出し、成功しました。
消費者金融にとっても、とかくダーティーなイメージが付きまとう業界だけに、銀行というこれ以上ない信用ブランドの看板を手に入れることができます。
存在感を増すかつてのパスキーのような中堅消費者金融業者!
破綻してしまったパスキーのような中堅業者はどうでしょうか?もちろん、銀行と提携するほどのスケールではありません。
多くの顧客にとって、大手の消費者金融を利用するメリットは安心感です。しかし、かつてのパスキーのような優良中堅業者も存在感を増しています。
それは、地域密着力とブラック対応力です。一度、信用情報に傷がついてしまった人にとって、大手消費者金融の審査の壁は高いのです。
(⇒ブラックでも審査に通りやすい消費者金融は?)
しかし、中堅消費者金融にとっては顧客獲得のチャンスでもあるので、そのような人にも積極的に融資に向けた審査を行います。
パスキーは消えても優良業者は消えてない…見分けるポイントとは
パスキーがかつて店舗27店舗構えていたように、優良中堅業者は地元密着で営業しています。中堅業者で優良な業者を見分けるポイントは4つです。
- 金利が利息制限法以内である
- 貸金業登録番号があり更新をしている
- 貸金業協会の会員番号がある
- WEB審査などネットサービスが充実している
一つ、注意点を指摘しておきましょう。パスキーは現在は、営業を行っていません。もし、パスキーを語った消費者金融があったとしたら、違法業者の可能性があります。
つぶれたり買収された中堅業者の名前と貸金業登録番号を利用して、営業するのはヤミ金業者の手口でもあります。もしパスキーの会社名を見ても、申し込みはしないようにしましょう!
【参考ページはこちら】
マイナー消費者金融を大手と比較!